カントリードール作家 安井 智子さん Tomoko Yasui 秋田市山王
http://www8.tok2.com/home/chibittohouse

 布を丸めただけの単純な顔、そして棒のような手足。目や口も絵の具で描いただけの素朴な人形だ。カントリードールとはアメリカの西部開拓時代に家庭でつくられていた手づくり人形のことをいう。家にある古着や端布を利用してつくられたので、まさに手づくりの素朴さとあたたかさがある。手垢で汚れてボロボロになっても「私の人形」はどんな新品人形より可愛い。

母親が子供につくる人形

 安井さんがカントリードールをつくるようになったのは七年前のこと。もともと子供たちの服をつくっていたところ、雑誌でカントリードールの写真を見て「ドールなら、成長とともに変わる子供服と違い、ずっと着ていてくれると思った」という。手縫いの雰囲気が身上なので、細かな裾縫いも必要ない。子供時代から針を持っていた安井さんは、今も洋裁が大得意だ。開拓時代の母親たちがそうしたように型紙も使わず、目分量で顔と手足の布を切っていく。

布をわざと古く見せる

 袋状に縫ったら水洗いして布の糊を落とし、コーヒーや紅茶に浸して、少し古ぼけた風合いをつける。パンヤを詰めて胴体をつなげて、手づくりした服を着せ、毛糸の髪をつけて最後に顔を描く。ポイントはいかに古ぼけた感じを出すかということ。コーヒーや紅茶で煮だした後でシワくちゃに揉んだり、端をギザギザに切って、素朴な手づくり感を出す。
 「知らない人には、こんな中古の人形なんてと言われますが、使い古した感じがいいんです」それが私流のカントリードールなのだという。

ドールのホームページを開設

 これまでにつくったカントリードールはすでに250体を超えるが、その中でも安井さんの最近のお気に入りは「クロンボちゃん」である。まっ黒い顔にトールペイントで描かれた丸いくりくりした目が可愛い。アンとアンディ風につくっているつもりだが、どこか崩してオリジナルなものにしてしまう。つくった人形たちはみんな「もらわれて」いってしまったが、たまに「娘が毎日抱いて寝ている」と聞かされることもあり、そんな時はとてもうれしいという。
 今年の夏にはホームページ「chibitto house」を開設。全国からアクセスがあり、注文も舞い込んでいる。開拓時代の子供の夢を育んできたカントリードールは、その素朴さで現代の人々にも愛されているようだ。