あけびづる細工といえば、手提げかごや花器など、
「素朴な民芸品」というイメージを抱く方が多いだろう。
しかし、小島さんの作るあけび「工芸」は、
フランス料理でいうところのヌーベル・キュイジーヌのよう。
どこか創作性が感じられ、実用性の枠の中でデザインを楽しむ自由さがある。

籐あけび工芸作家 小島 博子さん Hiroko Kojima 
秋田市土崎港西四丁目

あけびづるに見た「芸術」

 もともと、小島さんが専心していたのは籐工芸。その技術習得に熱をあげていたころ、あけびづるという素材に出合った。しなやかなのに強度があって、かご編みには最適。「何と言っても、機械では絶対できない手仕事の良さ。私の目には、あけびづるが芸術として映ったんですよね」。とはいっても、当時は手本となる図案などもなく、独自のデザインをもとに無我夢中であけびづると向かい合う毎日だったという。それ以降に生み出された作品たちは、今やカルチャースクールの「お手本」となり教室に飾られている。

素材をあるがままに

 取材中、小島さんが何回も口にしていたのは「素材を大事にする」ということ。「山には、望みどおりのつるが生えているとは限りませんから、素材がある時に作らせていただくという感じ。どうやって無駄なく生かしきるか、いつも思案どころです」。つるとは言えないくらい太い素材が届けられても、いろいろな自然素材などを組み合わせてうまく工夫する。よく「毛糸を編むように、つるを編むのね」と言われるそうだが、それも、つるに負担をかけないようにするため。あくまで素材に対して真摯である。仕上げも素のままで、基本的には何も塗らない。「あるがまま」を前面に出すことで、飾られるものの良さを引きだしている。

 ゼロから作る愉しみ

 できあがりは至福だが、完成間近になるとどこか寂しさも感じるという小島さん。形が見えてくる楽しみよりも、完成予想図を描いたデッサンを眺めながら、平面から立体へと具体的にどう形をおこしていくか、考えをめぐらせるワクワク感が好きなのだ。もちろん、納得のいくものに仕上がるまでは徹底的にこだわるが。「そんな風だから、ずいぶんと時間をかけてひとつひとつ作ってます。もっとあけびの良さを広めたいですね」
 ちなみに、表紙写真の作品は、あけびと麻を組み合わせて作ったという、サッカーボールのような「花入れ」。小島さんの自由な感性と、あけびの持つしなやかな可能性に気づく一品だ。