小玉さんには、○○作家という肩書きがない。
通りよく説明するなら 「ドライフラワーアレンジメント」に近いが、
何を創っているのかと問われると本人も一瞬戸惑ってしまう。

アーティスト 小玉清流さん Seiryu Kodama 
南秋田郡天王町天王字追分
http://www.jan-jp.com/~seiryu/

肩書きなしのアーティスト

 自然の「実もの」を使ったリース、かご、スタンド、オブジェ、ウエディングボード…。併行して喫茶店も経営するし、時にはハーブインストラクターとして講師を引き受けることもある。言うなれば、小玉さんは生活の「アーティスト」だろうか。
 作品に使われているのは、自然界にある時は生を終えた植物だ。しかし、ひとたび小玉さんの工房を経由すると、生活にあたたかさを灯すアートとしてよみがえる。生命がまた吹き込まれるのだろうか。カリカリと乾いた草や枝が、伸びやかに、こくこくと水を通しているように見えるから本当に不思議だ。


自然の美しさにはかなわない

 生まれは鳥海山のふもと。自然がいつもそばにあり、そこに目が向くのは当然のことだった。木の実を拾い、枝のしなりに雪の重みを知る暮らし。山を歩かなければ出会えない、お金をかけても買えない自然の美しさが愛おしい―。その感性を無心で作品にそそぎ込む。面白いことに、完成予想図はいつも夢の中に出てくるそうだ。表紙の作品も、「黄色を使おう」と漠然と思案していたところ、夢の中にあのデザインが現れた。プロローグ、明るく新しい季節の到来を感じさせる作品だ。毎日楽しい楽しい、と屈託なく連呼するその表情に、「母さんは本当に楽しそうだな」と、二人の息子さんからも最大の讃辞が寄せられた。

「物づくりは心づくり」

 小玉さんがよく口にする言葉だ。この度、親子のためのハーブ教室を始めたのも、「子どもがすっごく楽しそうに物を創る姿を、意外にも親があまり見ていないんじゃないかと思って。良いものを見たり、体験すると心が育ちます。その過程を必ず親子で経験してほしい」。
 実は、初めて小玉さんとお会いした時まず目を奪われたのは、彼女の手だった。まるで樹木のようにしっかりした手だったので、印象に残ったのだ。それは、母性や愛、自然…といったキーワードを彷彿させたが、この言葉が語られた時に納得がいった。物づくりを通して、この人の心は美しく浄化されている。私たちもまた、それに癒される。
 今日も「ここに来れば生かしてくれると思って」と、茶色く朽ちた植物が持ち込まれてきた。店の片隅には、松ぼっくりがダンボール箱いっぱいに入れられて無造作に置かれていたが、その雑然とした風景も美しかった。