アーティストでなく、デザイナーとして
ごろんと転がっているだけならば、ガラクタとも受け取られかねない素材たち。これらに目に見えない秩序をもたせ、ひとつひとつ組み合わせながら表情を操ると、いとも不思議なオブジェになる。
「カタチができ上がっているモノ、既成のモノ。これらはとても美しいのですが、それよりもオリジナルなモノのほうが私にとっては重要なんです」
アートに本格的に取り組んだのは、美術系の短大を卒業して広告代理店に勤務してから。グラフィックデザイナーとして広告制作に関わってきたが、そのころから平面だけでなく立体的なディスプレーにもひそかに興味を抱いていた。
「求められることに応えるのが好き。スタイルにこだわるのではなく、自分の個性を大切にしながら、人に求められ、必要とされるモノを作りたい。根は、今も変わらずデザイナーなんです」
オリジナリティーを吹き込む
秋田市大町、サン・パティオのビストロ「ラ・フォルテ」。ウッディな店内のフロアを仕切るわけでもなく、かといって飾るわけでもない。空間にデザインしたオブジェは、さりげなくパーテーションの役割を果たしている。素材は、竹、葉っぱ、和紙、麻、段ボール、金網、コルク、そしてフライパン…。既成のモノを生かしつつ、張り付けたり、アクリルで塗ったり、切ったりしながら自分のオリジナリティーをふうっと吹きかけていく。
空間をデザインするだけではない。クリスマスのイベントでキャンドルスタンドを作ったり、流木を利用してウッド・オブジェにしたり、アジアンテイストの盆栽風ディスプレーを作ったり。素材と、自分のオリジナリティー。このふたつを格闘させながら、ただ夢中になって空想を気ままにカタチにしていく。
自然の姿、形がお手本
そんな古川さんの原点は、意外にも純和風の「煎茶道」。秩序を保ちながらも、遊びのある自由な雰囲気に魅せられて二十年になる。そして、茶道や華道などの伝統文化も古川さんを彩る重要な要素。これら日本の総合芸術から学んだのは、アーティスティックな感性よりも、変わることのない「自然」の姿だった。
「どんなモノも自然の造形にはかなわない。自然の姿、形が、いつも私のお手本です。根本の部分には、その気持ちを大切に持っていたいんです」
花や木や風を愛でる心。それは、どんな素晴らしいアートよりも美しい感性なのかもしれない。
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