西宮 徳子さん Tokuko Nishinomiya 角館町歩行町
問い合わせ先/さくら工房 角館町川原町13-10 TEL0187-55-524

材料豊富な環境で

 西宮さんの住む角館町は、言わずと知れた桜の名所。ヨシノザクラ、ヤエザクラ、ベニヤマザクラなど、数種類の桜が立ち並ぶ。樺染めは、そんな材料豊富な恵まれた環境のなかで創作されている。「材料の調達で苦労することはないですね」とほほ笑む西宮さん。近所を散歩しては折れた桜の枝を拾い、花が咲いては花びらを集める。雪の重みで折れてしまった枝も、貴重な材料になる。花びらから出る色は、桜色そのもの。不思議なことに、桜の枝や幹を材料にしても美しいピンク色に染まるのだという。特に、花が咲く直前の幹から、もっともあざやかな色が出る。ちょうど四月には、お花見スポットとして有名な、檜木内川沿いの桜並木の枝を整えるための伐採作業が行われる。作業から出る木くずも、ありがたくいただく。捨てられれば単なるゴミ。落ちてしまえば腐って土になる運命。しかし、桜は、西宮さんの手によって染材料としての第二の人生を与えられ、もうひと花咲くことになる。

身近にある自然を満喫

 西宮さんと樺染めとの出合いは、町の公民館で行われたサークル活動。桜ひとつを取っても、種類や時期、使用する部分や組み合わせによって染め上がる色が異なるおもしろさにひかれていった。佐々木佐年先生指導のもと、サークルの仲間と語りあう出来上がりの予想も楽しみのひとつ。色との出合いを仲間と共有できる喜びが、染め物に対する興味をより深いものにさせたという。今ではサークルの藤井さんや千葉さんとともに、ふきのとうやフキ、すすきなど、桜という枠を超えた、さまざまな植物の染め物にも挑戦。道ばたの脇役だった植物が主役に変身して、予想もできないような新しい「美」を主張しはじめる。「身近にあるもので、こんなにも楽しめる。それはとっても素晴らしいこと」。この想いが、仲間同士の合言葉になり、新たなる素材を見つける探究心になっている。

季節に思いをはせて

 「季節がめぐるごとに、どんな色との出合いが待っているのか、楽しみで仕方がないんです。今年は、桜の実を使った染め物にチャレンジする予定」
 果たして桜の実は、どんな美しさを見せてくれるのだろうか。これから先の季節について語る西宮さんの目は、期待にあふれていた。
 壊されていく自然が問題になる一方で、自然から与えられた産物を大切に想い、とことん味わい、楽しむ人がいる。桜色の布との出合いは、自然との付き合い方をあらためて考えさせるものだった。そして、自然あふれる大地に生きることへの喜びや感謝を実感させる魅力にあふれていた。
 まもなくやってくる桜の季節。待ちきれない方は、西宮さんの作品をご覧いただくことをおすすめする。お花見気分を先取りできること間違いなし。そして、本物の桜を見上げたとき、西宮さんの自然に対する優しさに、心を染められることになるだろう。