キルター 船木 鈴子さん Suzuko Funaki スタジオKグループ公認講師
もめんの詩 男鹿市船川港船川字船川98 TEL.0185-23-3322
「キャシー中島のハワイアンキルト」毎週第2、第4金曜日
・午後2時〜4時まで・午後6時30分〜8時30分まで

仕事と両立しながら

 複雑な形に捕らわれず、一本の針でシンプルに縫い進めるハワイアンキルト。
 「シンプルだけどダイナミック。縫い心地がいいんです。針を動かしていればストレス解消になるの」
と船木さんは言う。船木さんはハワイと同じ、雄大な海に囲まれた男鹿市で、販売の仕事とキルターとしての活動を両立している。
 「キルトって生活や時間に余裕がないと作れないようなイメージがあると思うけど、働きながらでも作れるんです。時間をつぶすために漠然と作るんじゃなく、働きながら時間をみつけて作る。そうすると生活にメリハリが出て楽しい」
 仕事とは別に、夢中になれるものを持っている幸せが伝わってくる。
 大作であれば完成まで数年を要する細やかな作業。密な縫い目の一つ一つが、船木さん自身の時を刻む。充実した時を過ごしている人のキルトは輝いてみえる。キルトを語る船木さんの笑顔は、太陽のようにまぶしい。


キルトで世界が広がる

 「あなただけの時間と生活や仕事の時間はきっちり分けなさい」とアドバイスをくれたのは、キルトの師であるキャシー中島さんだという。キルターとして、働く女性として生き生きと活躍するキャシーさんの存在は「人生の師」とも語る。自己流でキルトを作っていた船木さんだったが、ふとしたことから東京にあるキャシーさんのキルト教室に通い始める。ひたむきな姿勢が認められ教室の講師に。本場アメリカで開催されたキルトの世界大会で入選もした。
 「キルトは私をいやし、世界を広げてくれた。さらにキャシーさんと出会い、目標を持つことができた」
 自らを「あくまでも男鹿の商家の嫁」と話す。仕事、家事、子育てに夢中だったとき、何気なく始めた趣味が、運命を大きく変えたのだった。


人への愛もつづる

 「キルトとは、生きている足跡を残すこと」。船木さんの言葉が穏やかに響いた。亡くなった人を偲んで作るメモリアルキルト。船木さんは亡くなった両親それぞれへの思いを作品にした。愛情深く、凛として生きた母にはペパーミントグリーンと茶色の布地を、大らかで優しかった父には、イメージにあうハワイの植物、モンステラのモチーフを選んだ。そして「こんなものも作ったのよ」と差し出された手には白地にパステルカラーがちりばめられた一枚のキルト。孫の誕生を記念して作った「ベビーキルト」だ。
 現在は、地元のホテルのために夕日をイメージした作品を制作中。ハワイの女性が、キルトに土地への愛と誇りをつづるように、船木さんの男鹿への愛が込められている。
 男鹿の海にキラキラとした朝日が昇るころ、船木さんは今日も静かに足跡をつづり始める。