ナチュラルクラフト創作 佐藤 たず子さん Tazuko Sato
能代市落合

 自然の造形には人の手が作ったものにはない美しさがある。
身近にある植物を組み合わせて作った佐藤さんのオブジェ。
滑らかなシルエットや優しい風合いに魅せられたら、次は発見と驚き!
バラの花かと思うと、それは松ぼっくりを逆さまにしたものだったりする。

素材の個性を生かして

 植物や石ころをはじめ素材の対象は自然のものすべて。色も形も素材のありのままの姿を生かして自由に配置されている。
 「材料を集めては、子供のように無心に部屋中並べてとっかえひっかえして組み合わせて作っているだけ」といたずらっぽく笑う佐藤さん。
 自然のものだけで作られているとは信じがたいほど、作品の表情は豊かで個性的だ。
 制作スタイルも実に自然。
 「今の季節はどんな材料があるかな」と気のむくままに山や田んぼの脇に出かけて素材集め。皮をむいて使うつるは梅雨の時期に採る。青いハスの実は、乾燥させるとグレーに、枯れたものなら深い茶色になるなど植物には「採りごろ」があり、状態によって色や形が変化するため、「すぐ採るというよりはまずは触って観察します」と語る。
 時には、ばったり遭遇したカモシカや野鳥などに話しかけることもあるとか。
 「以前は、どうして都会の人は田舎を求めるのか、と思っていたけれど今は田舎にやってくる人の気持ちがよく分かる。自然のなかにとけこむってとっても心地いいですから」

新しい発見を求めて

 子供のころから道くさが好きで、夕日に照らされている雑草に見とれてしまったこともあったという。自然に対する好奇心は今も昔も変わらない。草でタペストリーを作ったり、地元能代の海水で洗われた流木を使ったりと創作の可能性は尽きることがない。
 「お店に行けば何でもある時代だからこそ、身近にある自然素材に目を向けてみると優しい気持ちになれると思う」
 作品を見た人が笑顔になって帰る、その光景にも共感できる。よくみると、そのへんにある雑草だったり雑木だったり。今まで見過ごしがちだった大切な存在に気が付いた途端、愛しさが込み上げてくる。
 「自然は母親のような存在。私を包み込んでくれる」と佐藤さん。その想いが作品からにじみ出るように、こちらの心を優しく包み込む。