物を簡単に捨ててしまう時代。そんな中、本来捨てられる運命にある物を
生かすことができるなら最高のエコロジー。
ましてやそれを宝石のように輝く芸術品にまで変身させることができるとしたら…。

エッグデコレーター〈クリスタル会〉 高橋 洋子さん Yoko Takahashi 秋田市
毎週第1・3月曜日10:30〜ファッションアベニューAD2Fの
ミーティングルームにて」教室を開催中。本荘教室もあります。
連絡先 TEL.018-833-7834

殻を使う面白さ

 構造、形、すべてがこの世に新しい生命を送り出すためにある生物のゆりかご。薄くて繊細だが、新しい命を守るための強さも持っている。そんな卵の殻の神秘的な魅力に引かれてか、古くは古代エジプト、また現在ではキリスト教の祭典「復活祭」に、生命や幸せの象徴として卵に装飾を施す文化があるほど、エッグアートに関係する文化は深い。さらにはロシアロマノフ王朝時代に金属細工の名人が、金銀、宝石をちりばめた卵の装飾品を皇帝に献上して高い評価を受けたことからエッグアートは芸術品として認知され、欧米を中心に次第にクラフトとして広まった。材料のベースには、ニワトリ、ダチョウ、フランスガモ、エミュー、ウズラなど、さまざまな鳥の卵の殻を使用。「繊細で壊れやすい素材だから面白い」と、高橋さん。デコパージュ教室で知り合った、今野 静子さん、関 郷子さんとともにエッグアートをはじめデコパージュ(紙や写真などを切り抜き、ベースに張りつけて作り上げる工芸)などを手掛ける「クリスタル会」を結成。今年で二十年になる。三人ともに「卵料理を作る視点から言えば、いいリサイクルでしょ?」と話す主婦でもある。

卵に再び命を

 ベースになる卵の殻を磨いて、カットや彫刻を施してコーティング。絵柄や装飾の材料を付け完成。デザインが決まれば一週間ほどで仕上がるという。
 「主婦として働く時間が終わってから始まる、そのわずかな時は、何もかも忘れて没頭できる自分だけの時間。時間を縫って少しずつ仕上げる過程がうれしい」
 自分の作品で誰かに感動を与えることは作者にとっても喜びだろう。しかし、最も大きな喜びは「活動を通して知り合った人との出会い」だったと振り返る。会の仲間とは「この三人だから乗り越えられたこともある」と、きずなの強さを笑い合い、さらに会の活動を通して出会った多くの人についてこう語る。
 「ただ家に居るだけだったら得られなかった財産。これからも新しい人とのつながりに期待しながら、生きがいとして制作を続けたい」
 器用、不器用大歓迎。「窮屈なことは自分たちが嫌だから」という理由で型を持つこともなし。それが会のスタンスだ。こうして卵の殻は、いろいろな思いに新たな歓喜を再び宿している。