増田さん宅は、ミュージアムのよう。
玄関前では木製ロボットたちがお出迎え。
玄関に入ると、ニコニコ顔のふくろうや、 おとぼけ顔の魚など、
いろんな作品たちが訪問を歓迎してくれた。

癒やしの創造アーティスト 増田 良行さん Yoshiyuki Masuda 由利本荘市

ものは見方次第

 増田さんの作品に囲まれていると、思わず笑ってしまう。そして、楽しくなってくる。なぜなら、作品からにじみ出るオーラが実に幸せそうだから。人に幸せや喜びを与える作品づくりは増田さんのテーマであり、自身の幸せなのだという。しかしながら、誰かに何らかの刺激と喜びを与えている彼ら(作品)が、浜辺に打ち上げられた汚れたロープだったり、山で朽ちていた木片だったり、スーパーでリンゴを運び終えたパックだった経歴を持つことは、言われて初めて気が付くこと。
 「廃材にいかにして命を与えるか。そこから創造することには夢があり、今や自らの癒やしになっている」
 元、高校の美術教員。今も、精力的に油絵を描き続ける。そのかたわら、遊学舎、公民館、サークルなどの講師や現役美術教員への援助もこなす。理屈を語るより、もの作りの楽しさ、発想することの喜びを学ぶ同志と共に実践し、伝えている。
 「そこにあるものを、そのまま現実的に表現したら面白くない。創造は、自分だけにしか出せない何かを表現できる世界だから」と、創作テーマのひとつである、オリジナルふくろう像に似た優しい笑顔をのぞかせた。

もの作りの源は情熱にあり

 とにかく増田さんの手にかかると、今までどうでもよかった存在のものがアートになってしまう。一例を挙げると、焼き鳥の串、かまぼこの板、たき火の跡に残った焦げた木、松の木の皮など。これらが増田さんと出合ったのも何かの運命。廃材特有の退廃的な表情は消え、魔法にかかったように、誰かに幸せを届ける立派な顔を持ってしまう。
 「浜辺に打ち上げられたゴミ?人によってはゴミに見えるでしょうが私に言わせると、もったいないという感じ!」 
 暇があれば材料集めに海や山へ。「探す喜び」も大切なことだという。そういえば、一日の大半を過ごすというアトリエには時計が多い。
 「ものを作るには情熱がないと!
作品には、作る人の情熱や、いかに楽しんで創作したかが表れてしまう。時というものは人を動かす。時計は常に自分を動かすために。そして刺激を受け、情熱を喚起させるためのもの」
 増田さん宅から帰る際、玄関に飾られた作品の言葉に目が止まった。「明日は今日と全然違う」。書の下に配置された、ふくろうたちが癒やしのほほ笑みで帰路を見送ってくれた。