革製品には独特の味わいがある。
丈夫で、使い込むごとに色合いや質感を変化させて 次第に滑らかな手触りになる。
使う歳月を重ねるたびに増す愛着─。ことに自分の手で革を裁ち、
時間を掛けて縫い上げた作品なら、なおさら思いは深いだろう。

レザーアーティスト 革工房 裕 人見 裕子さん Yuuko Hitomi 秋田市
人見さんのレザークラフト教室
◎手 形 山 教 室
第1・3 木曜
10:30〜12:30
第1・3 火曜
19:30〜21:30
◎秋田カルチャースクール(キャッスル校)
第2・4 水曜
10:15〜12:15

革は柔軟

 「革は、作る人の思うがままに動いてくれる面白い素材。触れているだけでかわいらしく思えてくる」
 革(レザー)の生地は柔らかい。生地の表面を水で湿らせると、さらにしなやかに、ふんわりとした質感に変わり、思いのままにカットや装飾を施すことができる。カットした生地の端は始末することなく切りっぱなしのままでもいい。革は、凹凸を付けることにも、色で染めることにも素直に応じてくれる。
 人見さんの作品は、こうした革の特性を生かした自由な発想に満ちている。これまでに、ランプシェード、タペストリーのほか、市販のプラスチック製品を革で覆って作った花鉢やゴミ箱など、店先に並ぶ革製品への先入観を吹き飛ばすようなハンドメードならではのユニークな作品を生み出してきた。人見さんは、
 「私には、目にするものを『これを革で作ったらどうなるのだろう』と、何でも革に置き換えて考えてしまう傾向がある」
 と笑う。

深まる味わい

 人見さんは、子どものころから物づくりが好きで、かばん、ブラウスなど、身につけるものに自分なりのひと工夫を加えて、人と違うものを持ちたがるタイプだったという。学生時代は東京でデザインを学び、帰郷。以後、レザークラフト講師としての道を真っすぐに歩み続けている。
 「さまざまな物づくりのなかで、これだけは不思議と飽きることがない。じっくりと時間と手をかけるほど、一つひとつの作品に気持ちが入っていく」
 すぐに出来てしまうものより手の込んだものにこそ価値がある、革の表面に細やかに刻み込まれた彫刻が人見さんの心を物語る。完成した作品は、こうした価値を求める人の手に渡ることが多いが、東京のレザークラフト教室で初めて作った真っ赤なカードケースだけは大切に保管してあるという。東京での暮らし、夢中で作品を作ったこと―。今でも手に取るたびによみがえる当時の思い出。心のこもった手作りの革製品には、歳月と共に深まる、味わいと思い出がある。