晩秋の夕暮れ。薄暗くなった室内を不思議な明かりが包み込んだ。小枝の間から漏れる明かり、淡い桃色の光を放つ明かり。電球を覆っているのは、木の枝や皮、植物のつるで作ったランプシェードだ。

クラフト工房あいあむ 高橋 ひさ子さん Hisako Takahashi 横手市大森町
http://www.netoomori.gr.jp/~aiamu/

 秋田市にある籐(とう)工芸の教室に通って五年。その後、自宅のある横手市大森に工房を構えて五年。普段、高橋さんは、籐やつるを使ってバッグやインテリア小物を作っているが、次第に自然の素材を使った明かりの作品が増えてきたという。「薄暗いところをフワッとともす柔らかい明かりが好き。気持ちが落ち着く雰囲気がいい」
 工房の周囲は山に囲まれている。材料は、そこらじゅうにある。変わった形の木の枝やつるをみつけては想像を巡らせる。時々近所の人から「面白いものをみつけたよ」と材料が持ち込まれることもある。「毎回、『これで何か作れるかな。ここに何か付けたらかわいいかな』などと考えるところから創作が始まる。だから予想図はなし。最後にどんな作品が出来上がるのか私自身も分からない」と笑う。以前、近所の大工さんから青森ヒバのカンナくずを分けてもらった。手で力強く引いて出たくずは、一枚一枚長く丈夫でしっかりとしていた。そこで、籐を円形に編んだものにカンナくずを編み込んで中に電球を置いた。薄く削られた木肌を通して淡い桃色の光を放つ直径約45センチの大きな丸いランプが完成した。材料を提供した大工さんは、捨てるはずだったカンナくずが大変身したことに驚き、予想以上に感激してくれた。その出来事は、高橋さんの喜びにもなった。「ヒバのランプもほかの作品も、手作業で時間をかけて作るぶん、気持ちが入っていく。完成は喜びですが、誰かの元に渡る際は別れになる。手放すのがつらくなるほど心を込めて作っているので、引き取ってくれた先の方や作品作りに関係した方が喜んでくれると何よりもうれしくて」
 自分の経験を生かしながら、自然の中で仲間と楽しく物を作ることが夢だった。家族の応援もあって夢はかなった。自由な発想から生まれるさまざまな明かりは、今まさに美しく輝いている。