硬く冷たく壊れやすい…。ガラスへのそうした先入観を打ち消す温かな質感、丸み、想像力をかき立てる自由なかたち。素材の魅力を再発見させてくれる不思議な世界…。いつのまにかガラスの奥深さに魅了されてしまう。

硝子工房 窯硝 鎌田 祥子さん Syohei Tanifuji
秋田市寺内油田2-1-53 TEL.018-838-0707

顔写真 透明な板が光を通して辺りにぼんやりとした日だまりを作る。机の上には色とりどりのかけら。工房のあちらこちらに材料のガラスが無造作に置かれていた。「ガラスにはいろいろな種類が合って、固さや表情、質感がそれぞれ違う。その魅力を読んでいかに引き出すか。扱いが難しいぶん、作っていて面白い」
 電気窯の熱でガラスを軟らかくして成形する「キルンワーク」という技法で作品を作っている。最近は、器や、器をテーマにしたオブジェを作ることが多いという。以前は、芸術作品を制作して自己表現としていたが、日常生活で使う「器」というテーマを加えたことで変化が起きたと話す。「相手に何か感じ取ってもらうことで自己を表現できるのに、作品と見る人の間で関係が一方通行になり、壁を感じるようになっていた。そこでコミュニケーションが終わってしまうのは悲しいこと。日常にあるものに壁を取り払う力を見出した」
 日常でどんなふうに使われるか、使いやすいかなど、相手のことを思いながら作る視点が加わった。「作風を保ちながら、相手の声を聞いて、そのなかでできることを考える。人の意見を聞くことが楽しい」。自ら切り開いた新しい世界に充実感がにじみ出る。
 オブジェにも、コミュニケーションのイメージを描く。「一つひとつの小さな個体がたくさん集まり、つながり合って大きな集合体を形成するイメージ」だという。それは、作品を通して広がっていく未来のように思えた。