幸房 木の季 金子 義直さん Yoshinao Kaneko
秋田市将軍野東1-4-51 TEL.090-9429-4333

顔写真 数多(あまた)の円から柔らかなあかりがこぼれた。ほのかに浮かび上がるシルエットは不思議な曲線。うねったり、途切れたり、膨らんだり、独特の形を成している。色も形も質感も個性的。どれ一つとして同じものがない、流木ならではの味を生かして金子さんはあかりをつくる。
 「流木は面白い。木が何かの事情で流され、何年も海を漂う。侵食して年輪がはがれ、世界で一つの形になる。どこから来て、どんな旅をして、ここにたどり着くのか…。そんなことを考えながら流木を探す。みつけたときは『おまえ、ここで待っていてくれたのか?』と感動して。また波にのまれると再び合えるとは限らないから、奇跡の出合いだよね」
 もともと、あかりが好きだった。「流木にあかりをともしたらどんなふうになるのか」。そう考えて流木の表面にドリルで穴を開け、中をくり抜いたのが6年ほど前。円の内側に色の付いた和紙を張ってあかりに色を出すなど作風を確立した。今では、和紙の配色にこだわり、色で春夏秋冬を表現する。桃色や緑は春の躍動、温かみあるだいだい色や黄色は深まる秋、青や水色をちりばめたものは夏の夜空の星、淡い紫は雪明かりのようだ。
 ほかにも拾った牡蠣(かき)の貝殻を人の顔に見立てた『笑ってる貝』を制作。「作品を見る人も笑顔になる。不思議とね。目はシジミ貝の破片なんですよ」とほほ笑む。「自然は宝をくれる。そして秋田は自然が豊か。それをどう生かすか。考えるだけで飽きないですね」