小物教室 古舘 利子さん Toshiko Furudate
秋田市東通館の越8-38 TEL.018-835-3877

顔写真 うさぎ、人形用の小さな着物、縁起物の小物を連ねた吊るし飾り(ひな飾り)など、古舘さんは、布でさまざまな小物を作る。和裁を始めて三十年近く。最初は和裁の余りぎれを使っていたが、五年ほど前から古布を使うことにこだわっているという。
 「そのままにしておくと何にもならないものでも、手を加えれば美しくよみがえる。物を大事にしてきた昔の人の心を受け継ぎながら、今に生かせたら」
 古布は専門店で買うほか、タンスの奥に眠っていた古い着物を譲り受けてほどいたものなど。古い着物は、身ごろ、えり、帯地など、すべてをほどいて汚れを洗い、端切れにする。それは、かつて着物を身につけていた人、着物を捨てないでとっ
ておいてくれた人への感謝の儀式のようでもある。
 色あせや傷みが残る布もある。しかしそうした“味”も魅力なのだという。「ボロボロでも、それがいい。ジーンズと同じね」。年月と偶然によって作られた奇跡の一枚。さらに「洗ったら違う色が出てきたり、ほどいた布の間から表地と別の柄
の布が出てきたり」と、さらなる遭遇もあるという。こうして集めた端切れの色や質を合わせて作る唯
一無二の品々。独特の素朴さや温かさは、古布にしか出せない味わいだろう。
 昔ながらの心、愛情、手にする人の幸せや繁栄、さまざまな思いを一針一針に込めている。