思い思いのファッションで
はつらつと輝いている
「彼女たち」

創作人形 鈴木和子さん Kazuko Suzuki 秋田市飯島道東二丁目


 人形には空間を演出する力がある。人形があるだけで、その空間が居ごこち良さそうに見えてくる。鈴木さんの人形たちもそんな人の心をなごませてくれる雰囲気を持っている。玄関のプランターに腰かけて、テーブルの本の上で、それぞれの世界をつくって出迎えてくれた。

  思い思いにはつらつと

 人形のサイズは大きいもので三十五センチほどある。落ち着いた色あいの衣装と、目と口を横一文字で表現したシンプルな顔が印象的だ。髪は毛糸で作られており、ポニーテール、ソバージュ、カーリーヘアーなど、スタイルもさまざまだ。思い思いの髪を結った「彼女」たちがセーターを着て、ボトムをはくと、それぞれの表情が生まれて、はつらつとして個性的に見えてくるから不思議だ。

  人形の世界に浸る

 広さ三畳ほどの工房が鈴木さんのお城である。ミシンや作業机、毛糸を入れたカゴ、お気に入りの端布や反物がぎっしりつまった小箪笥など、すべて手が届く範囲に置かれている。これらに囲まれて、布と毛糸の組み合わせを考えている時が一番楽しいという。
「布は木綿やウール。毛糸は草木染めの糸を紡いで下さるスタッフに助けられ、いい色に仕上がるとデザインをするのが楽しくて。素材と色の組み合わせが決まれば半分できたようなものです。簡単なデザイン画にセーターのゲージ数なども書き込んで、まず、本体を縫って完成させてから、衣装の制作にかかるわけですが、日中はほとんど制作にかかりきり。人形の世界に浸っている時間が一番充実しています」


  娘に手づくりの人形を

 鈴木さんが人形をつくるようになったのは、子どもに手づくりの人形を持たせたいと思ったのがはじまりだったという。裁縫は得意なので、見よう見まねで本体をつくり、衣装も着せた。その頃の人形の写真を見せてもらったが、十代の少女のように見える。それから二十数年たった現在の人形は大人の女という雰囲気がする。人形を抱いていた子どもが娘になり、大人の女に成長したように、鈴木さんのつくる人形も大人の雰囲気を増していったようだ。
 二、三年ごとに個展を開催している。人形たちは今ごろどんな表情でいるかなあと、ふと思ったりする。時折、破損した人形が持ち込まれるが、鈴木さんは皆ていねいに「治療」してあげている。新しい衣装を着て「元気」になった人形たちはそれぞれの先で、心なごむ世界をつくっていることだろう。