太平山の麓に小松聡一さんの工房「グラススタジオ ヴェトロ」はある。周囲の森の涼しさとは対照的に、夏の工房内は24時間1000℃に保たれた溶解窯の熱でうだるほどに暑い。
 大粒の汗を流しながら、水あめ状に溶かしたガラスを吹きざおの先に巻き取り、息を吹き込む。ガラスが軟らかいうちに鉄ばしやはさみで素早く形を整えていく。作っているのは、ガラス工芸技法の一つ「吹きガラス」の器やグラス、一輪挿しなど。普段使いを意識している。
 小松さんは高校卒業後、語学留学先のカナダで吹きガラスに出合った。「不透明で色鮮やかで、透明なガラスとは違う色や質感に興味をもった」。ほどなくして、ガラス工芸の世界的な産地で「ヴェネツィアン・グラス」で知られるイタリアのムラーノ島へ。1年間、現地の工房に通って一流の職人たちの技を目に焼き付けた。
 その後、石川県でガラス工芸を学び、東京の工房に勤務。平成17年、古里に「ヴェトロ」を構えた。現在は、平日は制作に集中し、週末は工房隣のギャラリーで作品を展示・販売。ガラス工芸の体験教室も開いている。
 「ガラスは暮らしに身近な存在。しかし、工芸素材としての面白さはあまり知られていない。もっと腕を磨いてガラスの魅力を広めたい」
 真っすぐな思いが作品を宝石のように輝かせている。


〈ガラス作家〉
グラススタジオ ヴェトロ 小松 聡一(こまつ・そういち)
http://www5.plala.or.jp/glassstudiovetro
※作品や展示会の情報はホームページでチェックできます。