田村一 タイトル

  純白の白磁、透き通った水色の青磁。鉛色の空を思わせる淡いグレーの器もある。作品の色は、秋田の冬の景色がイメージの元になっている。「例えば、雪は夕方になると青く光って見える。雪景色は決して『白』だけじゃない。それを関東や関西の人に話すと『?』となる。秋田の人に話すと『分かる!』と、一瞬で感覚を共有できる。今は地元秋田で季節を確かめながら制作に没頭する日々」と田村さん。 
 高校卒業を機に上京し、大学で陶芸部に入部。卒業後2年間は東京で創作を続け、その後、焼き物が盛んな栃木県の益子町へ。2011年8月に帰郷して秋田市の太平山の麓に工房を構えた。「関東は1年を通して同じような天気に思えた。秋田は四季の変化が激しく季節にさまざまな色がある。どんよりした冬の空も僕にしたら最高! 秋田は創作の拠点として豊かな土地だと思う」 田村一 作品
 磁器のほか、時々は耐熱の土を使って鍋を作る。「『昔は30㎝もの大きなホタテの殻を鍋にしたもんだ』と祖父から聞き、ならばと作ったのがホタテ貝を模したかやき鍋。秋田の人も県外の人も面白い! と言ってくれた。陶芸家といえば『器』のイメージがあるが、器に限らず作品はどんどん自由になっている」
 土で何ができるか、どうなるか。実用性と実験性を合わせて、見る人をワクワクさせてくれる。


〈陶芸家〉 田村  一(たむら・はじめ)
辺境Living http://calmdown1.tumblr.com
※作品は、まど枠(秋田市大町)で展示販売しています。
田村一 写真