田村一 タイトル

 アケビのつるや山ブドウ、クルミの樹皮で、かごバッグを編んでいる秋田市の伊藤加代子さん。
 自然素材ならではの手触り、何十年と使うごとに増していく色つや、丈夫さ、場所を選ばずに持ち歩けるデザインなど、かごバッグには独特の魅力がある。
 「私自身、かごバッグを持つことに憧れがありました。しかも、手作りが好きだから編むのが楽しくて」
 規則的な編み目が美しい網代編み、一面の花模様がかれんな花編み、動きのあるデザインが持ち味の乱れ編み─。さまざまな技法で、植物の個性や味を生かしていく。見た目の美しさはもちろん、内側に布を張ったり、ポケットを付けたり、使い勝手にも配慮するのが伊藤さん流。田村一 作品
 材料は、春と秋、鳥海山に足を運んで自ら調達。手に入る量は決して多くはない。また、時期や天候により良し悪しもある。貴重な材料だからこそ「大切な山の恵みを分けていただいている」と自然への感謝を忘れない。
 昨年は、山ブドウのかごの表面に花編みの模様をあしらった作品で「第29回国民文化祭・あきた2014」の美術展工芸の部で秋田市長賞を受賞した(写真右)。1つ完成するまで手間暇はかかるが「世界で1つしかない味を生かす楽しさ、手にした方に喜んでもらったときの感動があるから夢中になれる」と笑顔を見せる。


〈かご作家〉 
伊藤 加代子(いとう・かよこ)
田村一 写真