ニット作家 武田 典子さん


Noriko Takeda
秋田市牛島 
  

 生成りの糸をざっくり編んだような自然な風合いが漂う武田さんのニット。自分が着たいと思うものを編むので、体の線を自然に見せてくれる絹糸を使うことが多いという。男もののようなたっぷりサイズのセーターだが、絹糸で編むと何年も着こなしたもののように体の線になじんでしまうのだという。

  2〜3カ月に1点のペース

 武田さんが編むのはセーターやカーディガンなどの上着とマフラー類だけである。作品を編む時間も1日2時間と決めている。だから一枚の上着を編みあげるまで2〜3カ月はかかることになる。寡作である。作品の展示会が3年に1度だけの開催というのもそうしたマイペースを通した結果なのである。
 そもそも武田さんがニットをやるようになったのは20年ほど前のこと。それまでは彫金をやっていたが、もっと大きなものが作りたくなって、まず、自分が着るものを編んでみることにした。知人に基本の編み方や製図の書き方を教えてもらいながら、当初は既製品のような普通サイズのものを編んでいたが、年齢を経るごとに体型があらわになることに抵抗が生じ、次第にたっぷり幅をとったものになっていったという。


  生成りの糸でイメージが膨らむ

 糸は生成りの絹糸を草木染で染めてもらっている。ほとんどがサンドベージュやブラウンなどの地味な色だが、最近はアースカラーに加えてピンクなども使うようになった。若い頃は決して着なかった色だが、年を経てパープルやピンクなども好きになってきたという。生成りの糸の光沢や太さを見て、デザインのイメージを膨らませ、色を指定して草木染で染めてもらう。イメージを膨らませているこの段階が一番楽しいという。ゲージ計算のために製図はするが、デザインは既に頭の中で完璧に出来上がっているのだ。が、出来上がってみたら、イメージと少し違うなという時もあったという。失敗もしたが、それはそれで次の作品へのステップアップになった。

  着る人の生き方が表われる

 自身の作品を着ている武田さんを見てもわかるように、武田さんのニットは服を着ているという異物感を感じさせない。「だらだらしている」と武田さんは自分のニットを表現する。ニットだから出せる味。ニットには姿勢がそのまま出る、着る人の個性や生き方まで表れる、だから面白いという。自身の生き方を紡いで編んだニットには着る人を自然に表す力があるのかもしれない。