池田美佳 タイトル

  秋田で華々しく開催された国民文化祭、オープニングフェスティバル。なまはげたちの太鼓の響きと共に、番楽の激しい動きと共に、まるで風のように舞った。しなやかな肉体とダイナミックな動きで物語を導く、「山の女神」だ。

 コンテンポラリーダンスとは1980年代初頭のフランスで起こった舞踊で、クラシックバレエやジャズダンス、フラメンコといった既成のジャンルに属さないダンスのこと。その定義は曖昧で、コンテンポラリーダンスとは何なのかと問われてどう答えるかが悩みの種だ。
 「コンテンポラリーダンスは数あるダンスのジャンルの中で、最も自由で多種多様な表現ができるダンスだと思います。バレエの基礎をベースとしながら、あらゆるジャンルのダンスの要素を取り入れて、人間の感情や自然の情景などを肉体を通して表現する創作舞踊。制約がない分、果てしない。100人いれば100通りのダンスがあって、その人自身の個性をより自由に生かせるのが魅力」
 小学3年で全国コンクールに出場して以来、目の当たりにしたトップクラスのダンサーたちに刺激を受け、無我夢中でレッスンを続けてきた。中学1・2年時には全国コンクール2連覇。大学入学後も次々と舞台を経験して、気が付けばそのままプロとして活動して今に至る。肉体を追求して得た柔軟性を駆使して、柔らかさ、しなやかさを生かしたアクロバティックな動きが持ち味だ。池田美佳 ダンス
 「いい音楽に出会ったとき、テーマが浮かんで、言葉が出てきて、詩が生まれたり、風景が広がったりしていく。そこから世界観が湧いてきて、自分のダンスになります。無の状態から何かを生み出すまではものすごく苦しい。でも音楽や絵画など、心を突き動かされるような何かに出会えたときに、その感動を踊りにしたいと思う。そして、見る人と共有したいと願う。頭の中のイメージを体で表現するのは難しいけれど、言葉がないからこそ伝わるものがある。それを大切にしながら、自分の肉体を使って、表現できることの限界まで挑戦したいんです」
 体の動きを突き詰め、自分自身を表現していくコンテンポラリーダンスだからこそ、迷い、戸惑うこともある。
 「自分らしさって何だろう、と。その答えはダンスと同じように果てしなく、どこまでも終わりがなくて。きっと、ずっと探して、ずっと追求していくんだと思います。自分にしかできない表現を見つけるために。体から何か言葉が聞こえてくるような、情景が見えてくるような、そんな踊りをするために。どんどん上がっていく自分の理想の踊りとの差を埋めるべく、毎日が自分との闘い。ちょっぴり不安だけれど、楽しいです」
 自分を語る、涼しい瞳が輝く。その目線の先に、どんなビジョンが映っているのだろうか。

(2014.12 vol109 掲載)

プロフィール/コンテンポラリーダンサー 池田美佳(いけだ・みか)
1984年大仙市生まれ。7歳より吉沢蔦バレエ研究所(大仙市)に入所、モダンダンスに出会う。中学1・2年で出場した全国コンクールで2連覇。その後、シニアでも優勝。2005年文化庁新進芸術家国内研修員選出。09年自身の振付けによるソロ「snow wall-狭められてゆく色彩」にて新人賞受賞。10年新国立劇場芸術監督David Bintley氏により期待の新鋭アーティストに選出され、ソロ作品を発表。11年秋田県芸術選奨。多彩な振付家のもと国内外の数々の舞台で主要キャストを務めるほかPVやCM出演、イメージモデルなどさまざまなシーンに活動の場を広げている。明治大学文学部演劇学卒。東京都在住
みかりんぐ http://yaplog.jp/mika5972/