健康を考える〔海外旅行での注意〕
海外旅行は楽しくもあり、ちょっと不安なところもあります。そのちょっと不安の中には旅先での不案内のほか、”病気にかからないか?“ということもあるかと思います。最近、亜熱帯や熱帯地方への旅行者の三人に一人は旅行者下痢症に罹患しているといわれるくらい、多くの海外旅行者が病気を持ち帰っています。そこで海外旅行の幸せ気分を損なわないために、注意すべき感染症のことについてお話ししたいと思います。なお、対象としてここでお話しする病気は、子どもから大人までかかる普通の病気のお話しです。


まずは旅行先での注意点について

  飲み水
 ホテルの水道水をはじめ、ただで手にはいる水を飲んではいけません。安全な国もないわけではありませんが、ほとんどの国の水道水は日本人の体には適していません。

  なま物
 レストランで出されるものは別として、飲み水と同じように、どのような菌がいるのか皆目見当がつきません。勇気のある方は食しても結構ですが、それ以外のわが身の大事な方は食べない方が賢明と思います。

  虫(特に”蚊“)
 マラリアをはじめ命にかかわる病気の多くは、蚊によって引き起こされます。マラリアは流行地が非常に広いため感染する可能性も高く、できるだけ蚊に刺されない努力をしてください。

 ウイルス性出血熱の場合は、仕事で森林地帯などに滞在しなければ、通常の短期間の旅行ではそれほど心配はいりません。なお、長期の滞在者で出血熱の心配のあるかたは、保健所に一度ご相談されるほうがよいと思います。

 以上、可能な限り気をつけて下さい。


 つづいて病気のことについてお話ししましょう。

 次の症状の出た方は、医者の診察を受けて下さい。
(受診の際には、必ずいつ、どこへ、何日間旅行していたかをはっきり告げて下さい。)

  発熱
 その多くは”カゼ“と間違いやすいため、自己判断してしまうことが多いので注意してください。

  腹痛、下痢
 この症状が一番多いと思われますが、食べ物さえ注意していれば起こることは防げます。なお、血便をともなうときは確実にかかったと考えても間違いないと思います。

 以上が多く認められる症状ですが、このほかにも体がだるい、頭痛がするなど体調が思わしくない方は医者の診療を受けることをお薦めします。


最後にかかる可能性のある病気の名前とその恐ろしさについて、
一言ずつで説明します。

  コレラ
 食べ物による感染です。胃を摘出している方は要注意。
下痢が強いが適切な治療をすれば大丈夫です。

  赤痢(細菌性、アメーバ)
 食べ物による感染です。熱、腹痛、下痢〜血便が主たる症状です。
適切な治療をすれば大丈夫です。

  マラリア
 蚊に刺されることによって発病します。倦怠感、頭痛につづいて発熱。熱帯熱マラリアは適切な治療をしなければ、死亡することが多いので要注意です。

  ランブ鞭毛虫症(ジアルジア症) 
 食べ物による感染です。下痢、腹部不快感などで無症状のこともあります。免疫不全(抵抗力の低下した状態)の人では重症化することもあります。

  ウイルス性出血熱
 多くは蚊、ダニなどに刺されることによって発病します。高熱、頭痛、倦怠感にひきつづいて皮下出血など出血傾向が出現し、その多くは死亡します。この病気は普通の旅行で感染することはほとんどありませんので、それほど恐れる必要はありません。

 いろいろとお話ししてきましたが、基本的には食べ物と飲み物に対して特別の注意を払えば事は足りると考えてさしつかえありません。

 それでは楽しいご旅行であることを、お祈りいたします。

山本組合総合病院 内科 工藤 和治