秋田県総合保健事業団  常務理事 井上 義朗

秋田県医師会

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がんは身近な問題

 日本人の死因の第一位はがんであり、その死亡率は年々増加してきております。そして全死亡者の三人に一人ががんのためになくなっており、また三人に一人は一生のうち一度は何らかのがんにかかる時代になりつつあります。私たちにとって、がんは身近な問題であります。

 がんがどのようにしてできるのかは十分明らかになっておりませんし、症状がでてからのがんに対しての有効な治療法は確立されていないのが現状です。一方、医学の進歩とともに、一部のがんについては症状のない早期の段階でがんの診断、治療が可能になってきております。したがって私たちにできることは、ひとつはこれまでの多くの研究によって明らかにされてきた発がんの危険因子をさけることでがんにかからないようにすることです。もうひとつは定期的に検診をうけできるだけ早期にがんを発見し適切な治療をしてもらいがんによる死亡を防ぐことです。

危険因子を分散させる生活をする

 大部分のがんの発生には、食事やたばこなどの生活習慣が深く関わっております。このことからがん予防のためには日常生活の過ごし方が大切になります。発がんの危険因子は、私たちのまわりに数多く存在しており、それらに長期間さらされることががんの発生につながるわけです。そこで発がんを防ぐためには、危険因子を分散することがポイントになると思います。たとえば、長い期間偏った同じ食品をくり返し食べることは発がんにつながります。これに対していろいろな食物をバランスよくとることは発がんを防ぐことを可能にします。実際の日常生活の過ごし方は、長期間にわたり取り組みやすいものでなければなりません。平成九年十月に世界がん研究基金とアメリカがん研究財団が、がん予防に関する勧告を発表しました。この主旨を簡潔に具体的にまとめたものが「がん予防十五カ条」(表)です。第十五条のたばこの項目を除き、番号が小さい項目ほど重要なものとなっております。しかし胃がん死亡率の高い秋田県民にとって努力しなければならないものは第九条の塩分の問題と思います。塩分は胃がんの危険因子であります。またこの十五カ条はがんだけでなく心臓病、脳卒中等多くの病気の予防にも役立つものと考えます。ぜひ、参考にして下さい。

検診による早期発見・治療が大切

 日常生活に十分気をつけても完全にがんの発生を防ぐことはできないので、定期的に検診をうけ、がんを早期のうちに発見し治療してもらうことが必要であります。がんという病気は複雑で、同じ臓器にできてもたちの悪いもの、よいもの、みえにくいもの、みやすいものがあり、もちろん臓器ごとにも性格にちがいがあり、すべてが早期発見・治療ができるわけではありません。かかりつけ医、医師会に相談し、有効な検診をうけていただきたいと思います。幸いわが国では頻度が高く、早期発見・治療が可能ながんに対して、集団検診のシステムがありますので大いに活用していただきたいと考えております。すなわち胃、子宮、乳房、肺、大腸のがん検診が、多くの方に簡単でかつ安全に行える方法(スクリーニング検査)を用いて、四十歳以上(子宮、乳房は三十歳以上)の方を対象にして地域、職場で広く行われております。地域の検診はこれまで国が音頭をとって実施されてきましたが、今年から市町村が中心になって行うことになりました。地域の特性を考えこれまでより充実したがん検診が進められますことを願っております。

よりよいものは実践から生まれる

 最近がん検診をめぐる論争が持ち上がってきております。がんの全体像が十分解明されたわけではありませんので、現在の診断技術も完全なものではありません。しかし、がん検診は、そのメリットはデメリットを上回っており、否定されるものではないと考えます。わが国では年間四十二万人の方ががんにかかり、そのうち二十七万人の方がなくなっております。そして残りの十五万人の方は、検診などで助かっております。昔のがんイコール死の時代にくらべますと著しい進歩と言えると思います。

 がんの診療のレベルは、現状のままで終わるのでなく、これからもできるだけ多くの方ががんで苦しまない、あるいはなくならないで済むことを目標に向上していくべきものであります。そのためには引き続き検診の実践の積み重ねが必要です。それに伴い、がんを防ぐ生活方法、がん検診の方法もより充実したものに変わっていくと考えます。


がん予防15カ条

1.食事:植物性食品を中心に。 2.体重の維持:BMI*を21〜23の範囲。
3.運動の維持:仕事であまり体を動かさない場合は、1日1時間の早足の歩行と週1時間の激しい運動
(テニス、ジョギングなど)を。
4.野菜・果物類:多種類の野菜・果物を1日400〜800gあるいは5皿以上食べる
(おひたし1皿は80g、リンゴ1個は250gです)。
5.他の植物性食品:穀物、豆・いも類を1日600#〜800gあるいは7皿以上とる
(ごはん茶わん1杯は110g、じゃがいも1個は100gです)。
6.アルコール:積極的に勧められないが、飲むなら1日日本酒にして男性で1合、女性で0.5合。
7.肉類:魚、鶏肉がよい。牛・豚肉なら1日80g以下に。
8.全脂肪:動物性脂肪食品を少なくして、植物性脂肪を適度にとる。
9.塩分:1日6g以下(みそ汁1杯は1.5gです)。調味料にハーブやスパイスを使う。
10.食品の貯蔵:かびが生えないようにする。
11.食品の保存:腐敗しやすい食品は冷凍保存する。
12.食品添加物・残留物:適切な規制下では問題ない。
13.調理法:焦げた肉や魚はさける。
14.栄養補助剤:他の項目を実践している場合は、必要ない。
15.たばこ:吸わない。

*:BMIは肥満度を表す指数。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数字。22が標準
( ):具体的な内容