秋田県医師会 佐藤 家隆

秋田県医師会
役に立つ“健康情報”を
インターネットホームページでご覧ください。
URL http://www.akita.med.or.jp/

 腹痛を訴えて受診した患者さんを診察する際、症状を聞いただけで病気の予測がつく場合が少なくありません。今日は、腹痛があって病院へ行く際、お医者さんに症状を説明する際のコツについてお話しします。
 どんな病気の場合でも、症状を正確に要領よくお医者さんに伝えることが大切ですが、腹痛がある場合には、特に次のような点に注意してお話しいただければ、医師は大変に助かります。

1.おなかのどの部分が痛むのか

 おなかは図のように九つの部分に分けて呼ばれます。このうちのどこの部分が最も痛むのかをお話しください。病気によって、痛みの場所にある程度の特徴があります。
 心窩部(みぞおち)の痛みの場合最も多いのは、胃の病気です。右季肋部痛の場合には、胆石、肝炎などが疑われます。右下腹部(回盲部)痛の場合には急性虫垂炎、下腹部痛では大腸炎、膀胱、子宮の病気などが代表的な病気です。

2.いつから腹痛があったのか

 急に起こった痛みなのか、以前からあった痛みなのかは、病気の性質を知る上で重要な手掛かりです。急に起こった痛みでも、突発的に起こったのか、徐々に痛くなってきたのかという事、以前からの痛みでも、何年も前からなのか、ここ数カ月あるいは数週間なのかといった事をお話しください。


  3.どんなときに痛むのか

 腹痛の場合、特に食事との関係は重要です。おなかが空いたときの痛みで何か食べると良くなるような場合は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍に特徴的です。食事の後に痛む病気の代表的なものには胆石があります。また、排便との関係も重要です。排便によって痛みがすっかり取れてしまうような場合には、過敏性腸症候群をまず考えます。このように、痛みが食事や排便と関係しているかどうかをお話しください。

  4.どんな物を食べたか

 腹痛が起こる前に食べた物によっても、ある程度病気の予測がつく場合があります。脂っこい物を食べた後やお酒を飲んだ後に起こった腹痛は、膵炎が考えられます。お寿司や刺身など生の魚を食べた後に腹痛が起こった場合には、アニサキスという寄生虫が原因の場合があります。腹痛が起こる前に食べた物をお知らせください。

 5.熱があるかどうか

 熱を伴う腹痛は炎症性の病気を疑わせ、時には急を要する場合もありますので、発熱は重要な情報です。急性虫垂炎、急性胆嚢炎、腹膜炎などすぐに処置を必要とする場合も少なくありません。また、嘔吐や下痢を伴っている場合には、食中毒の可能性もあります。ちなみに食中毒の場合には、他にも同じ時期に同じ様にして発病している人がいるはずですので、その点も参考になります。

  6.どんな物を吐いたか

 嘔吐があった場合、どんな物を吐いたかを必ず伝えて下さい。特に、真っ黒いススのようなものが混じっていた場合には要注意です。これは胃や十二指腸からの出血を意味し、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、ある種の胃炎などが疑われます。一方真っ赤な血液を吐いた場合は、食道の潰瘍(マロリーワイス症候群など)の可能性があります。

 この他にも、血便や血尿を伴っていないか、初めて起こった腹痛なのか繰り返し起こる腹痛なのか、痛みの程度は同じなのか次第に強くなっているのか、特定の姿勢で痛みが強くならないかどうか、といったような情報が得られますと、医師は診断の上で大変助かります。なお、小さな子供さんの場合、吐き気でもなんでも「おなかが痛い」と表現することが多いので、注意深く観察することが大切です。