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腰痛の頻度
約80%の人が一生のうちに腰痛を経験するといわれています。欧米のある疫学調査によれば一年間に成人労働者の50%が腰痛を経験し、15〜20%が治療を受けているそうです。病気で仕事ができない原因のトップが腰痛です。
一九九九年の厚生省の調査によれば日本人の腰痛の有訴者は人口千人に対し92.5人で最も多い症状です。ちなみに二番目が肩こりで91人です。腰痛で通院している患者は人口千人あたり39.5人で、高血圧症についで二番目に多く、このうち三人に一人はあんま、鍼、灸などの民間療法を受けているそうです。
腰痛の原因には怖い病気も潜んでいる
腰痛は、内臓由来の腰痛と椎間板ヘルニアなどの脊柱(せぼね)由来の腰痛に大きく分けることができます。内臓由来の腰痛には尿管結石などの泌尿器疾患、子宮筋腫などの婦人科疾患、解離性大動脈瘤などの循環器疾患、膵炎などの消化器疾患があり、脊柱由来の腰痛にはヘルニアのほかに分離症や中高年者に多い骨粗鬆症、癌の転移などがあります。脊柱由来の腰痛は体を動かすと痛みが増強するという特徴があり、内臓由来のものは体の動きとは無関係です。
腰痛の多くは加齢、労働環境、生活習慣によるものですが、中には放っておくと手遅れになるものもあります。腰痛が一週間以上続く場合や、下肢のしびれや痛みを伴う場合は、悪い病気でないかどうか専門医(整形外科)に判断してもらうことが大切です。
腰痛は人類の宿命か
ライオンなどの四足動物から進化した人類は二足歩行により、両手が自由に使えるようになって、高度の文明を築きあげました。しかし、この進化の犠牲になって大きな負担を強いられている所がいくつかあります。腰痛は二足歩行のために背負うようになったいわば人類の宿命なのです。したがって腰痛の予防は糖尿病や風邪の予防とは異なった難しさがあります。
腰痛の予防のメカニズム
腰痛の原因で最も多いのが椎間板ヘルニアなど椎間板に由来するものです。脊柱は硬い椎骨(背骨)と柔らかい椎間板が交互につながった柔軟性のある長い柱ですが、椎間板は車のタイヤと似た構造をしてクッションの役割をしています。外側は線維輪というタイヤで、中には空気の代わりにゼリーのような髄核が入っています。この椎間板の老化は二十歳頃からすでに始まり、タイヤ(線維輪)にひび割れが入って、中の空気が少しずつ抜けるように、ゼリー(髄核)の水分が失われて行きます。やがてタイヤはボロボロになり、タイヤ全体(椎間板)がペシャンコに潰れてしまいます。年をとると身長が縮む原因がこのタイヤ(椎間板)のパンクです。割れ目から中の髄核が外に出て神経を圧迫するといわゆる坐骨神経痛が生じます。これが椎間板ヘルニアです。この椎間板の老化の予防はできません。この痛みやすい椎間板への過度の負担から守ることと、椎間板がペシャンコになって狭くなった神経の通り道を広げることが腰痛予防の基本です。
腰痛予防
脊柱は身体の後側(背中)に位置しているので、腰を前に曲げたり、妊娠や肥満でお腹が大きくなると身体の重心が前に移動して脊柱から離れるため、椎間板にかかる負担が大きくなります。さらに妊娠や肥満では身体のバランスをとるために腰が過度に反ってしまいます。しかし腰を後に反りすぎると神経の通り道が狭くなり腰痛や下肢痛の原因になります。
腰痛予防のために日常心がけることは、
1)適度の運動
2)重い物を持ち上げるときは、膝を折って腰を低くして背筋を伸ばし、身体(脊柱)に近づけて物を持ち上げること
3)お尻が沈み込む柔らかいベッドを避けること、膝の下に座布団などをいれて下肢を曲げて寝ること
4)立ち仕事のときは片方の足を半歩前に出して10〜20cmの台にのせること
5)長時間のあぐらや下肢を伸ばして座る姿勢を避けることなどが大切です。
腰痛体操
外来で患者さんを診ていると腰痛体操を行い、悪化させてくる人をしばしば見かけます。腰痛体操の誤った認識が原因です。腰痛体操は腰痛をなおす体操というよりは、再発を防ぐために行う腰痛予防体操と心得るべきと思います。
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